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  • 密度の単位はg/cm³であり、Anton Paar DMA60/62は小数点七桁まで測定できる。

  • 酒の熟成がすすむと、水とアルコールの分子構造がコンパクトになり密度が大きくなることが知られている。

  • 有意差の基準は小数点四桁目である。



※文献1より改変

実験A
泡盛新酒、古酒(20年)、バーボン(5年)を超音波熟成させ、各非超音波熟成酒と密度を比較した。 結果は表に示した通り、三種の酒で超音波熟成酒の密度が有意に大きくなった。

実験B
エタノール水溶液40wt%で同様の実験を行ったが、結果は表に示した通り超音波エタノール水溶液が有意であった。ここに示していないが、文献3でマウスに投与した26wt%、30wt%、33wt%、40wt%のエタノール水溶液でも同様の結果を得ている。



※文献6より改変

  • DSCは液体の熱的状態変化を連続的に測定できるため、酒の熟成研究には非常に有効である。

  • 水の融点は0℃、エタノールの融点は-114℃である。

  • 新酒と古酒をDSCで比較すると、古酒の方が凍結温度が低く、放出熱量も少ない。

  • 凍結させた新酒と古酒を解凍する時のデータでも古酒の方が融ける温度が低く、吸収熱量も少ない。3と4から新酒に比べて古酒の方が水とエタノールの分子構造がコンパクトであり、しかも均一に分散していると解釈できる。
実験A
20wt%のエタノール水溶液を30日間超音波熟成(WUS)させ、6ヶ月間放置後、非超音波熟成水溶液(CON)と共にDSC測定した。
  • 凍結温度―WUSCONより6.93℃低かった。
  • 放出熱量―WUSCONより10.31J/g少なかった。
  • 融解温度―WUSCONより2.06℃低かった。
  • 吸収熱量―WUSCONより20.3J/g少なかった。

以上の結果から、超音波熟成エタノール水溶液は水とエタノールの分子構造が非常にコンパクトであり、しかも均一に分散していると解釈できる。




※文献3より改変


JEOL EX-270 FT-NMR

  • NMRは水分子やエタノール分子の回転、並進の運動速度を高分解能で測定できる。

  • 溶液の分子構造を探ることが出来るため、酒の熟成研究には有効である。
実験A
  • グラフは文献3でマウスに投与した8種類のエタノール水溶液のデータである。

  • NMRの測定核は溶液中に自然存在する重水素(²H)を用い、緩和時間(T1)を測定した。

  • 重水素(²H)の自然存在比は水素の69000/1に過ぎず、測定は困難であるがデータの信頼性は非常に高い。

  • 結果として各濃度のエタノール水溶液とも超音波水溶液の緩和時間(T1)が有意に長く、水分子の回転速度が速かった。従って、水・エタノールの分子構造がよりコンパクトであることを示している。

  • 密度計やDSCの結果ともよく相関している。

  • 他の測定核を用いても同様の結果を得ている。



  1. 人間の官能テストの結果を統計的に数値化するのは非常に困難である。

  2. 高精度の味覚センサーが完成すれば、官能テストの精度が大きく向上する。

  3. 食品の生産ラインに設置が可能となる。
実験A
  1. 九州大学工学部の都甲潔研究室に壱岐の焼酎メーカー猿川伊豆酒造所の「猿川」と「猿川」を30日間超音波熟成させた「円円」を持ち込み、都甲先生に測定をお願いした。

  2. 結果はグラフに示す通り、No.4のセンサーで大きな差が生じた。

  3. No.4のセンサーは「まろやかさ」の指標であり、30日間超音波熟成させた「円円」の方が非常にまろやかであることを示している。しかもこの結果は人間の官能テストと一致している。

  4. データはRKB毎日放送制作「夕方どんどん」 1998年10月1日放映から引用改変。







  1. 香りの評価も味覚と同様、人間の官能テスト結果を統計的に数値化するのは非常に困難である。

  2. 微妙な香りの官能テストは特別に訓練された人々の判断に負うところがほとんどである。

  3. 高精度の香りセンサーが完成すれば、生産現場でのブレは激減し、あるいは有毒ガスの検知などにも非常に有効となろう。
実験A
  1. 文献9で学生ボランテアに飲ませた市販の白ワイン超音波熟成した同銘柄の分析をした。

  2. 装置は東京工業大学工学部の江原勝夫先生開発の「6チャンネル・官能対応香り分析装置」である。

  3. 結果はチャートに示した通り。
    快適香…超音波熟成ワインで20%〜30%向上。
    香り強度(アルコール臭など)…超音波熟成ワインで20%減少。


  4. データは人間の官能テストと一致した。

  5. なお、官能テストではワインに限らず純米吟醸酒、乙類焼酎、ウイスキー等も同様の評価を得た。

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